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センスを築き上げるのはやめろ!!

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映画「ストップ・メイキング・センス(原題:Stop Making Sense)」を観た。

この映画は1984年のアメリカ映画で、映画のジャンルは音楽ライブ映画だ。

この映画の、主な登場人物は、パンク、アート・ロック、ファンク、ワールド・ミュージックから影響を受けている、アメリカのニュー・ウェーブのバンド、トーキング・ヘッズのメンバーとそのサポート・メンバーだ。

トーキング・ヘッズは、ボーカル・ギターのデヴィド・バーン、ドラムのクリス・フランツ、ベースのティナ・ウェイマス、キーボード・ギターのジェリー・ハリソンから構成される。サポート・メンバーとして、コーラスのリン・マーブリイとエドナ・ホルト、ギターのアレックス・ウィナー、キーボードのバーニー・ウォーレル、パーカッションのスティーブ・スケールスがいる。

この映画は、トーキング・ヘッズの1983年にロサンゼルスのパンテージ・シアターで行われた12月の13日から16日のライブの映像を編集して作られたものだ。映画の解説の中では、「映画のために3回のライブを撮影した」と解説されているが、3回か4回か、どちらが正確か定かではない。

トーキング・ヘッズは、アート・ロックから影響を受けていると書いたが、トーキング・ヘッズのメンバーの、デヴィッド・バーンとクリス・フランツは、アメリカの芸術大学である、ロード・アイランド・スクール・オブ・デザインの生徒だった。

ボーカル・ギターのトーキング・ヘッズの中心メンバーである、デヴィッド・バーンは、スコットランドからの移民だ。スコティッシュアメリカンのバーンは、8歳か9歳の時に、アメリカのメリーランド州に移り住んでいる。移民の国アメリカらしいことだ。

ニュー・イングランド州のロード・アイランドにある、芸術大学の生徒だったバーンは、1974年の3月にニュー・ヨークに引っ越した。バーンとフランツは、最初ベーシストなしで活動していたが、フランツのガールフレンドだった、ティナ・ウェイマスがベースとなる。

その後、元モダン・ラバーズだった、ジェリー・ハリソンが1977年にメンバーに加わり、トーキング・ヘッズの基本的なメンバーが定まる。ジェリー・ハリソンはギターだけでなく、様々な楽器を操ることができる。ハリソンがキーボードを弾く姿は、この映画「ストップ・メイキング・センス」でも見ることができる。

このライブ映画を観ていると、トーキング・ヘッズのリズムのタイトさが、とても印象に残る。白人が伝統的に行っているクラッシックや、白人民謡とは、違ったリズムに重点を置いた音楽からの影響が明確に聴きとれる。

それもそのはずで、トーキング・ヘッズは、リズムに重点が置かれることが多い、黒人音楽からの影響を受けている。アメリカの黒人ファンク・バンド、ファンカデリックや、アフリカのナイジェリアのミュージシャンのフェラ・クティからの影響が色濃い。

ファンカデリックの「ハードコア・ジョリーズ」というアルバムを聴きながら、この記事を書いているが、ファンカデリックの音楽を聴くと、トーキング・ヘッズの音楽の成り立ちの在り方の理由がわかる。トーキング・ヘッズの音楽は、他の多くの白人ミュージシャンたちがそうしたように、黒人の音楽から影響を受けている。ファンカデリックを聴くと、トーキング・ヘッズは、黒人のリズムから特に影響を受けているバンドだということがよくわかる。

トーキング・ヘッズは、パンクの老舗CBGBから出てきたバンドの一つだ。CBGB出身の他のバンドには、例えば、ブロンディ、ラモーンズ、スリッツ、ハートブレーカーズなどのバンドがいる。

CBGBというライブハウスにスポットを当てた「CBGB」という映画が、当時のCBGBというライブハウスの様子を映し出している。CBGBとはカントリー、ブルーグラス、アンド、ブルースの英語表記の頭文字をとったアクロニム(acronym)で、当時のCBGBの経営がいかに当初は大変で、そこからテレビジョンなどのバンドが登場して、CBGBが何とか利益を出せるようになっていった様子が映画「CBGB」に描かれている。

そのCBGBにも出演していたのが、この映画「ストップ・メイキング・センス」に主演しているトーキング・ヘッズだ。トーキング・ヘッズは、黒人音楽の特に黒人音楽のリズムから強く影響を受けているバンドだと書いたが、この映画で、トーキング・ヘッズのサポートをするメンバーは全員が黒人のミュージシャンだ。

映画の解説の中にあるのが、「今のステージに寝転がって痙攣している振り付けは、教会で音楽が演奏されて、人が恍惚状態に入った時を表現している」という言葉だ。つまり、それは黒人が教会で、説教を聴き、音楽を歌い、踊り、恍惚としている状況をさしている。その教会とは、黒人だけが来るような教会のことだろうし、それは、アメリカの黒人奴隷の存在を、人種隔離の存在を示してもいる。

映画「ストップ・メイキング・センス」のサントラを配信で聴きながら、歌詞を読んでみたのだが、一見歌詞には特に印象に残る具体的なフレーズはないように感じる。意味より、リズムが重要ということだろうか?

ライブ1曲目の「サイコ・キラー」の歌詞は、まずまず具体的に、サイコ・キラー、つまり猟奇殺人者の心理を描いているように思える。“夜、ベッドが燃えているようで眠れない”“僕に触るな”や、サイコ・キラーが、性欲を感じている表現や、“彼らに敬意やマナーがない時、僕は彼らを憎む”という歌詞は、他の曲の具体性を欠く歌詞よりも、具体的だろう。

サイコ・キラーは、猟奇殺人者の心理を描くという具体的なテーマを持っているが、後数曲を除いて、他の曲のテーマはもっと主観的で、社会的批評が一部にあり、あからさまに直接的ではないと言えるかもしれない。

ただ、音楽の歌詞というのは、その歌詞自体が具体性を持っていなくても、実際の事件や出来事、ニュースと重なると、急に社会的なメッセージを発信するようになる。

トーキング・ヘッズの曲で、具体的にメッセージを放っている曲と言えば、「ライフ・デュアリング・ウォータイム」だろう。この曲のタイトルは、今現在(2023.9.9)でも、残念ながら現実味を失っていない。

今、世界中で戦争が起こっている。ウクライナや、アフリカでは、戦争で難民が生まれ、特にアフリカでは、人道的危機と同時に、食料危機が起きている。戦争をすれば、農業もできず、輸入関連もストップして、難民が大量に生まれる。その危機に、私たちはどう立ち向かっていけばいいのか?

“これはパーティじゃない、これはディスコではない/これは知性を欠いて回っているのでもない/踊っている時間はない、ラブリーな平和と議論に言及する政治家/今そのための時間はない”。

 

※「ストップ・メイキング・センス」とは、資本主義に迎合する”センス”、つまり「”何かについての重要な態度”を築き上げるのはやめろ」、態度を築き上げた時、それは資本社会に迎合することになる、と言っているのかもしれませんね。皆さんは、どう解釈しますか?


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