映画「ダイ・ハード(原題:Die Hard)」を観た。
この映画は1988年の映画で、映画のジャンルはアクションだ。
この映画の主人公は、ニュー・ヨークで警察の仕事をしている、ジョン・マクレーンだ。ジョンは結婚していて、妻ホリーとの間に、2人の娘、ルーシーとポーリナがいる。
妻のホリーとジョンは別居している。ホリーは、日系企業に勤めていて、社員としても優秀だ。ホリーは、西海岸のカリフォルニア州のロサンゼルスに住んでいる。ジョンは東海岸のニュー・ヨークに住んでいて、ホリーは娘と共に西海岸のロサンゼルスに住んでいる。
映画の冒頭にジョンは、飛行機に乗っている。すると、飛行機に乗って緊張しているジョンの隣の男性が、ジョンにこう言う。「飛行機が恐いときは、乗り終わった後に、裸足になってつま先を曲げるんだ。すると恐怖なんてなくなる」と。
ジョンは飛行機が恐いのかもしれないが、実はジョンにはもっと西海岸に来て恐いことがある。それは、妻ホリーと会うことだ。なぜ、2人は別居しているか? それは、ホリーのキャリアのためだ。そして、ジョンは結婚の継続に危機感を持っている。
ジョンは、妻ホリーが恐い。仕事ができて、結婚前の姓を名乗り、娘の面倒もしっかりみている。つまり、ホリーはでき過ぎた妻なのだ。だから、ジョンはホリーの尻の下に敷かれている。ジョンはホリーに頭が上がらない。
ジョンは、ホリーに頭が上がらないので、会話をするとついムキになって、会話がうまくいかない。多分、ジョンは古風な男だ。妻が、自分の支配下に置かれることを望んでいるのかもしれない。つまりジョンの理想は、家父長制だ。
ジョンは、東海岸のニュー・ヨークから、西海岸のロサンゼルスまで、妻に会いにやって来る。それはクリスマス・イヴのことで、ホリーは会社のパーティーにジョンを招待している。ジョンは、ホリーが出迎えてくれると思っている。
だが、実際にジョンを迎えに来たのは、リムジンとその運転手アーガイルだ。リムジンは、ホリーの勤める会社が巨大多国籍企業であることを示している。リムジンに運転手付きでお出迎え。それはホリーの力の誇示だ。
ジョンよりもホリーの方が、仕事をする人間として優れている。それを、その運転手付きのリムジンは示している。つまり、ジョンは、ホリーにみくびられている。そして、そんなジョンがホリーから尊敬を獲得するというのが、この映画「ダイ・ハード」だ。
この映画では、ホリーの勤めている日系企業の巨大なビルが舞台となって、アクションが展開する。そのビルでの、敵の強盗とのジョンの戦いが、この映画のジョンの男としての、人間としての威厳をかけた戦いだ。
だから、敵はそんなに立派ではない。なぜなら、ジョンが敵に勝って、ジョンの威厳を取り戻すための敵だからだ。10人くらいの強盗が、ジョンの敵だ。
その敵は、警察やFBIと交渉する際に、自分たちを、テロ組織だと偽る。ただの金庫破りなのに。北アイルランド解放戦線、カナダの自由ケベック運動、スリランカ・アジアの曙運動などの、名前を上げながら、実はただ大金が欲しいだけの拝金主義者であるのが、ジョンの敵だ。
ジョンの敵がテロリストで、欧米の帝国主義と闘うテロリストだったらどうだろう? ジョンはそこまで、勝利の達成感を味わうことができない。欧米の帝国主義という、世界的な悪事と闘うテロリストが相手だと、ジョンは敵に勝っても、「ジョンは所詮は欧米の帝国主義の犬か」ということになってしまう。だから、ジョンの敵は、ただの拝金主義者だ。
映画では、金庫破りの敵が、「我々は欧米の帝国主義に反対するテロリストだ」と名乗るのには理由がある。それは、ビルを停電にして、金庫を開けるためだ。テロリストの名を、拝金主義のために利用する、ゲスな敵というのが、ハンス・グルーパーというリーダーに率いられた金庫破りの集団だ。
この映画で、ジョンは、妻ホリーに対するコンプレックスを克服するのだが、もう一人、仕事に対する劣等感を克服する警官というのが登場する。その黒人警官の名前はパウエルという。
パウエルは、勤務中に子供を打ち殺して、事務方に回ることになった警官だ。パウエルは子供を打ち殺してしまったことに強い罪悪感を覚えている。だから、ドーナツを馬鹿買いして、バクバク食べている。きっと、ストレスからだろう。
そのパウエルが、映画のラストで大活躍をする。ジョンに仲間を殺されて恨みを持って、ジョンに復讐を誓っている大男の敵の白人男性を、銃で打ち殺し、ジョンを救う。パウエルは、銃に対する恐怖を打ち払うと同時に、銃の威力を再確認して、ジョンを救う。
その時のパウエルの表情は、不安に満ちたものだ。「あぁ、人を殺してしまった」というような。ただ、その人殺しは、ジョンという仲間を救ってはいるが。ただ、人殺しは苦々しいものであるのはいつも変わらない。
この映画の中、ジョンは裸足で駆けずり回る。それは、金庫破りとの戦いの恐怖を克服するためだ。そして、それは同時に、でき過ぎた妻への恐怖心を克服するためにでもある。ガラスを踏んで、足の裏を傷つけながらもジョンは、敵を倒すために奮闘する。
このビルの所有者の、ナカトミ商会は、インドネシアに開発をする計画を持っている。アメリカに支社を置く、日系企業のアジア開発。それは、欧米の帝国主義に乗った、日本企業によるアジアへの帝国主義だ。
欧米の帝国主義に乗った、日本の帝国主義。日本は帝国主義の被害者でありながら、帝国主義の加害者でもある。その、日本が開発をアジアに行う。例えば、南米のペルーの開発に多国籍の企業が、ペルーに借金を負わせて開発を実行するように。
日本の開発は、欧米の開発より良いものなのか? 開発は開発だ。開発される側は、借金をすることになる。そのような開発に魅力を感じるのは、マクロな単位の人たちだ。マクロな単位、つまりお金持ちのエリートたちだ。借金は国民に押し付ければいい。
後進国に借金をさせて、開発を推し進める先進国。その構図が、この映画「ダイ・ハード」でも見て取ることができる。大企業がなぜ大企業になるのか? それを支えているのは、誰かの莫大な借金だ。
借金の利息の取り立てで儲けるというヤクザな話は、耳にしたことがあるだろう。それをやっているのは、多国籍企業も同じなのだ。つまり、多国籍企業の商売は、とてもヤクザな商売だ。
それを、救ったジョン。それって、敵はショボくて、メンツを保ってるが、守った企業がそれじゃあね…。その辺どうなの?! ジョン!!!