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多国籍企業の歪み

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映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス(原題:Hamlet liikemaailmassa)」を観た。

この映画は2002年のフィンランド映画で、映画のジャンルはシェイクスピア現代リメイクものだ。

この映画のフィンランド語の原題:Hamlet liikemaailmassaをDeepl翻訳で直訳すると、「ビジネス界のハムレット」となる。「ハムレット」とはシェイクスピアの有名な悲劇の戯曲で、“デンマークの王子ハムレットが、父王を毒殺して王位に就き母を妃とした叔父に復讐する物語”だ(ハムレットWikipedia 2024.5.4閲覧)。

ハムレット」は、もともとは北欧の伝説が元になっている(ハムレットWikipedia 2024.5.4閲覧)。北欧のフィンランドの映画監督のアキ・カウリスマキが、この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」/「ビジネス界のハムレット」の監督であることは、単なる偶然ではないのかもしれない。

この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」の映画の舞台は、ビジネスを営むおそらくフィンランドの上流階級/支配者階級だ。ハムレットの父親を毒殺しハムレットの父の事業を乗っ取った、叔父クラウスは、自分の経営する事業をノルウェーオスロの実業家のワレンベルグに売ろうとしている。

クラウスは、製材業・北部の炭鉱・造船業を経営している。その3つの事業、製材業・北部の炭鉱・造船業をワレンベルグは欲しがっている。クラウスが、そのうちの、自ら経営する造船業を潰して、ワレンベルグカリブ海の観光船業を独占し、残りの製材所、北部の炭鉱をワレンベルグに売る。

ワレンベルグノルウェーの実業家だ。フィンランドの国民がどうなろうと知ったことではない。クラウスはこう言う。「(ワレンベルグは)製材所に保険をかけて、保険料を増額させて、そのうち製材所を潰すだろう。製材所が潰れれば、保険が効く。それで、ワレンベルグは儲かる。私たちは、その見返りを貰おう」と。

つまり、クラウスは企業を発展させることではなくて、企業自体の売買で儲けを出している、つまり現代的な実業家だ。クラウスは、おそらく大実業家で、多国籍な企業の経営者であるかもしれない。

クラウスに毒殺された、ハムレットの父も、暴君的な経営で企業を発展させてきた。多分、クラウスとあまり変わらない実業家だったのだろう。ハムレットは、そんな汚い一族の跡継ぎだ。クラウスは、ハムレットのことを邪魔者だと思っている。

クラウスは、多国籍企業の経営をしていると書いた。多国籍企業とは一体どんな企業であるのか? この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」の中では、ほとんど多国籍企業らしき会社の実態について触れられずに、その関係者の家族の内輪の卑劣さが描かれる。

多国籍企業とは、世界の各国に事業所を持つ会社だ。例えば、アメリカや北欧や中国の採鉱業を営む会社も多国籍企業だ。採鉱業を営む多国籍企業は、世界銀行や世界通貨基金(IMF)に頼まれて、例えば資源の豊富なラテン・アメリカに、採鉱場を作ろうとする。採鉱場の誘致に、多国籍企業は現地の人たちに、贈り物をして、見せかけだけの説明会を開く。そこでは、多国籍企業が誘致している採鉱業の負の側面である、採鉱業による環境の汚染による健康被害については触れられない。多国籍企業は採鉱業の誘致に成功する。多国籍企業は、現地に軍隊を作る。軍隊は、採鉱場や、その周辺で健康被害が出て抗議運動が起こった時の、抗議運動の排除に利用する。軍隊や警察によって、現地民の抗議運動者はレイプされたり殺されたりする。現地民が、その軍隊や採鉱場で働くこともある。また、採鉱場のエンジニアは、違う地域の人たちがやっていたりする。採鉱場があることで、現地民は深刻な健康被害を受けて、牧畜や農業を営んでいる現地民は、生活の糧を奪われる。採鉱業に関わる人は利益を得るが、採鉱業に関わらない現地民は貧困のままで、健康被害にも犯される。多国籍企業に現地の国からの税金はかからず、多国籍企業は税金逃れのためにタックス・ヘイブンを利用する。現地の国には利益があまり落ちず、現地の国民が技術を身につけるわけではない。多国籍企業は、この場合ラテン・アメリカの現地民を迫害して、莫大な利益を上げる。このような多国籍企業は例えば、銅採鉱をペルーで行っている。そして、その銅は、再生可能エネルギーを利用する電気自動車や、ソーラーパネル風力発電に利用される。つまり、私たちの社会は多国籍企業の現地民迫害に加担していることになる。それが、多国籍企業であり、私たちの暮らす社会の正体だ。

この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」で、描かれるのは、このような多国籍企業の内輪もめだ。その内輪もめが、見苦しければ見苦しいほど、この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」は成功した映画ということができる。

例えば、この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」に描かれるクラウスの経営する多国籍企業は、手りゅう弾を商品として扱っていたこともある。つまりは、死の商人軍産複合体だ。

イスラエルのガザ侵攻にも、アメリカが融資している。アメリカのイスラエルへの融資は、武器弾薬を買うお金になる。そのお金は、軍産複合体・武器商人・死の商人のもとへ流れる。つまり、アメリカは、イスラエルにお金を渡し、そのお金でイスラエルは武器を買い、そのお金は、おそらく多国籍企業軍産複合体の利益となる。イスラエルはその武器弾薬で、ガザの市民を殺している。ガザの犠牲者は、3万人をとうに超えている(2024.5.4現在)。

映画中ハムレットは言う。「昔はちゃらちゃらして楽しかったが、今は何をしていても虚しい」と。それは、父親や叔父が、多国籍企業を営んでいることと関係がある。ハムレットは、多国籍業の非道さを知っているのだろう。

ただ、多国籍企業の非道さを知りながら、ハムレットは家を捨てることをしない。ハムレットがするのは、多国籍企業の横暴を妨害することだ。個人的な、社会的な憎しみを込めて。ただ、ハムレットは上流階級の男だ。

この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」で、多国籍企業の役員たちが新商品について会議をしているシーンがある。アキ・カウリスマキ監督の映画はいつもドライなユーモアが溢れているが、このシーンもユーモアが溢れている。

死の商人として武器弾薬を売っていた怖―い多国籍企業が、今度はアヒルのおもちゃを売り出そうとしているのが、このシーンだ。利益のためなら、多国籍企業はなんでもする。しかし、多国籍企業に、プライドがあっても困る。なぜなら多国籍企業は利益のためなら何でもするところが、解決策になるかもしれないと、この映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」は示している。つまり、消費者の価値観とそれに基づく行動は重要だ。

ハムレット・ゴーズ・ビジネス 33m43s アヒルの新商品について会議する多国籍企業の重役たち1 ユーロスペース

ハムレット・ゴーズ・ビジネス 33m47s アヒルの新商品について会議する多国籍企業の重役たち2 ユーロスペース

ハムレット・ゴーズ・ビジネス 33m59s アヒルの新商品について会議する多国籍企業の重役たち3 ユーロスペース

 


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